
古代エジプトの壁画に家畜として描かれるほど、ダチョウは人間との関係は歴史的に長く深いものがあります。食肉、食用卵としてはもちろん、皮革や羽、油脂、医療用途など、さまざまな材料として活用されています。
長くてたくましい脚を持つ巨大鳥・ダチョウ。鳥類はもちろん、動物の中でこれほど生命力のある生物は少ないと言われるほど高い免疫力を持っています。ケガや病気にも強く、寿命は60年にも上ります。
ひとたび走り始めると、最高時速約60~70㎞という、地球上の二足歩行動物の中で最も速いスピードで駆け抜け、その運動能力の高さは、目を見はるほどです。
ダチョウ肉は近年、低脂肪・低コレステロールな健康肉として大いに注目を集めています。また、必須アミノ酸をバランス良く含み、筋肉維持に不可欠なクレアチンや、脂肪燃焼を助けるカルニチンなどが豊富に含まれていることから、著名なスポーツ選手達もこぞって摂取しています。このようにヨーロッパでは、牛・豚・鶏と並ぶポピュラーなお肉としてさまざまな料理に使われ、毎日の食卓を彩っています。
ダチョウは数千万年には、アフリカ、地中海沿岸から中国までの広い地帯で生息していたと考えられますが、現在、野生のダチョウが見られるのはアフリカの乾燥地帯のみです。ダチョウには4種あり、日本で家畜として飼育されている大部分は「アフリカンブラック」と呼ばれる改良種です。
身長は2.5mを超え、その巨体から繰り出すキック力は、シマウマやライオンさえ寄せ付けないほどです。大きな翼を持っていますが、空は飛べません。その代わりに足が非常に速く、また視力と聴力にも優れているため、人間が捕まえるのはなかなか容易ではありません。
ダチョウは雑食性で、草や葉、枝、木の実などの植物を中心に幅広い植物等を採食します。ダチョウは他の鳥類に比べて腸が非常に長く、約23mもあり、食べ物を約36時間かけてゆっくりと消化します。
ダチョウはもともと、一日の中で昼夜の温度差が激しいアフリカのサバンナ地帯で生息している鳥ですが、日本のように多湿で四季のある地域でも飼育できます。高い環境適応力があり、北海道から沖縄まで全国どこでも寒暖を問わず生息できることが確認されています。
鳥というと、ひ弱なイメージがありますが、ダチョウは生命力が強く、ケガをしてもすぐに傷が治ってしまう上、寿命は40~60年もあります。一羽のメスから年間平均約10~40個の卵が産まれるなど、他の家畜に比べて非常に高い繁殖能力を持っています。
ダチョウは、鶏のように大声で鳴いたりせず、静かでおとなしい鳥です。臭いもほとんどしないため、住宅地の近くで飼うこともできるほどです。ダチョウ同士や、他の動物とも縄張りを争ったりしない平和的な鳥だと言えるでしょう。
ダチョウは、腰からモモにかけての筋肉が精肉として食されます。鶏肉は白身ですが、ダチョウの肉は鴨肉のように鮮やかな赤色をしています。味は子牛肉に似て、柔らかく美味。臭いやクセはなく、どなたにも美味しく召し上がっていただけるとてもマイルドな味わいのお肉です。
脂肪が少なく、くせのないダチョウの肉は、どんな料理にもぴったり。刺身やタタキをはじめ、ステーキやハンバーグ、唐揚げやカツ、味噌漬けにして西京焼など、さまざまなバリエーションが楽しめます。フレンチ、イタリアン、中華、韓国料理、エスニックなどレパートリーが広がります。
ダチョウの肉は、低カロリー・低脂肪・低コレステロールで、鉄分が多いことが特徴です。牛肉と比べて、脂肪は7分の1以下、カロリーは半分以下、コレステロールは約3分の2で、逆に鉄分は1.3倍も含まれています。ほかにも、筋肉維持に不可欠なクレアチンや、脂肪燃焼を助けるカルニチンも豊富。体形が気になりながらも、美味しい肉を食べたい方におすすめです。
肉の種類 | カロリー | タンパク質 | 脂質 | コレステロール | 鉄 |
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ダチョウ | 114kcal | 25.5g | 2.3g | 68.0mg | 2.9mg |
牛 | 282kcal | 24.7g | 17.6g | 77.0mg | 2.5mg |
豚 | 323kcal | 28.0g | 22.3g | 84.0mg | 1.8mg |
鶏 | 164kcal | 31.7g | 3.5g | 73.0mg | 0.5mg |
ダチョウの肉と同様に、卵もマイルドでクリーミーな味わいで、和洋中あらゆる料理にマッチします。ダチョウの卵の栄養成分は鶏とほぼ同じですが、重量は約1.4kgにもなり、鶏卵の約30倍に相当します。和食・洋食・中華などさまざまな料理に使うことができ、ヘルシーな料理のレパートリーが広がります。
「オースリッチ」の名で親しまれているダチョウの皮革。その軽くて丈夫な特性と、表面の美しい水玉模様(クイルマーク)が好まれ、バックや財布、靴などに幅広く利用されています。また、高級感ある肌触りを活かして、高級車の内装や家具などに使用されることもあります。
ダチョウの脂肪からはダチョウオイルを精製することができ、これを利用した化粧品が開発・発売されています。ダチョウオイルには、牛脂に比べてリノール酸が豊富に含まれており、今後は栄養補助食品としての利用や、医薬品・工業品としてもさまざまな用途の可能性が見込まれています。
ダチョウの羽は、他の鳥類と異なり左右対称の形をしており、ふわっとゴージャスな印象を与えます。その価値は、長さ、横幅、形、光沢などで決まってきます。扇子や房飾りなどのファッションアイテムとして、また、静電気を帯びない特性を活かして、自動車などのダスターとしても最適な素材です。
骨はスープ材料として、爪はアクセサリー用材料として活用可能です。また、ダチョウ牧場は、観光資源としても人気を集めています。さらに、最近では、鳥インフルエンザの予防に有効な抗体を、ダチョウの卵を利用して大量生産する画期的な方法に大きな注目が集まっています。